愛と別れのカイロス 27
《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。「それは我がフランスの大統領選挙なんかでもやるけどね。ネガティブキャンペーンっていって、対抗相手の弱点をとにかく晒して、相手の価値を下げることで自分を上げようとする、いわゆる振り子の原理さ」マリナの頭の中でやじろべえがポンと浮かぶ。片方が下がるともう片方が上がる様を連想しながら、ああ、なるほどねと頷きつつ、「じゃ...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。「現当主ルパート・ドゥ・アルディに国家反逆罪の疑いだ」―――国家反逆罪っ！「やはりそうか。外事第二課が動くわけだ」シャルルは小さく頷く。「タレコミによると、ルパートは空軍時代に付き合いのあった国内軍需会社の役員を抱き込んで、かなりヤバいことをやっているらしい」「フン。落ちたものだな。で、相手は？」「これはまだ未確...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。３この年のイースターは四月十四日だった。一週間前頃から、パリの街には世界中からの観光客が集まり始め、グッドフライデー（受難日）を迎える頃に、それはピークとなる。商業施設をはじめ、あらゆる観光地はそれこそ芋洗いのような人ごみ状態だった。シルヴァンのアパルトマンがあるサン・ルイ島も世界遺産ということもあり、戸口の前ま...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項を今一度よくご確認ください。■３０話。登場人物の流血描写があります。また、作中に登場する団体及び記述はすべてフィクションであり、実在する団体とは一切関係ありません。...
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愛と別れのカイロス 31
《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。＊ヘリコプターが着陸したのは、ノルマンディ地方の小さな村ジェルブロワ郊外の、鬱蒼と茂る森に囲まれた古めかしい屋敷だった。「Portez-le tôt...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。「シャルルから所在を調査するように頼まれたんだ。あれはそう、四月二日。ドゴール空港から僕のアパルトマンに移動するその途中でだよ。ドイツにいるって情報だけだったから、ちょっと時間がかかったけどね。結果が分かったのは、それから三日後だったよ」「じゃあ、一週間前には和矢のことがわかってたの？...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。勝手に命を預けられ、勝手に命を捨てられる。そして勝手に運命を変えるとあがめられ、勝手に滅ぼすとののしられ、必死であがいているうちに、勝手に自分の大切なものすら失っている。「もうたくさんよっ！...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。■フィクション１００％です。実在する団体、組織とは一切関係ありません。４「カンヌ国際映画祭って……なに？」ベッドに横たわるシャルルは、「……マリナちゃん」とはぁっと深いため息をついてから、片肘をついたしどけない姿勢で、羽毛のような睫毛を持ち上げ、妖艶に笑う。「ただちに98/100すべてを実行してやろうか？」ぎょっ...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。＊ポッポゥ。顔を出した鳩が、かわいらしい声で三時を告げた。キュンツェル湖があるシヴァルツヴァルト地方は、鳩時計発祥で知られる。ドイツの精密な木材加工の技術と、隣接するスイスの繊細なオルゴールを組み合わせて作られたこの時計は、時報と同時に鐘が鳴り、美しい調べが流れる。すぎゆく時間を惜しむことはない、謳歌すべきと教え...
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月光欲
月が濡れる。エンジンが苦しげに戦慄いてから、ようやくあきらめた。そのわずかなぬくもりすら、今は苦い。じゅんと湿る青い草原に足を一歩だけ踏み出した。ああ、なんて今夜は暗いのだろう。木も森もアスファルトも黙り込み、ため息一つ漏らさない。地球が微睡む。すべてが眠ったかのように声を潜めた大地が、その時、ぱかっと裂けた。天から星が落ちた。ひとつ。またひとつ。「あ、流れ星」両手の掌を天に向けた。「今頃、織姫と彦...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。「明日のピカルディー地方は一日快晴の予報だ。マリナ、準備しておけ」ダンスの修行が始まってから、かれこれ十日間。食事と睡眠時間以外はひたすら踊っていたと言えるぐらいの猛練習が続いていたある日、夕食が終わるが否や、シャルルは突然にそう告げた。天才シャルルの的確な指導と、ヨーロッパ選手権覇者であるシルヴァンの実力はやは...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。ジェルブロワ郊外のサン・カルバリの丘にマリナは立っていた。「うーん、気持ちいい！」身体をいっぱいに伸ばして背伸びをする。上品なコートレバーレースで縁取られた緋色のドレスがつんとつっぱった。その感触さえ心地よくて、ふふっと笑いが漏れ出る。だって、外に出ることすら久しぶりで、目に痛いほどのお日様も、頬にかかる風も、髪...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。＊雨が上がった昼過ぎ、キュンツェル湖がひとたびの賑わいを見せる。『神の水』と呼ばれるこの湖は、ドイツでも希有の透明度を誇り、底まで透き通せる美しさを魅せる。何時の時代だろう、自然の流れの中で打ち倒された木々が湖の彼方に横たわり、白無垢となって一面の水色に沈むその有様は、人の心をそぞろにかき立てた。それはきっと美で...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。＊「ジル――――っ!!」止めてくださいという制止を振り切って、和矢は夜の森に飛び出した。途端に、森が哭く。木立がさんざめき、侵入者をゆるさないという気迫に漲りながら、枝葉を震わせる。その荒ぶりの中、和矢は道なき道を走り抜けた。「どこだ、どこにいるんだ…っ!?」昼過ぎ、ジルが消えた。少しの間、前後不覚に陥っていた和...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。＊雲が切れた。「はあ、はあ、はあ……っ！」走って湖畔まで来た和矢は、右手で右膝を押さえて息を吐いた。左肩にチラッと視線だけ流す。この肩が動けば獣達をもう少し楽に片付けられたかなと思いながら頭を起こすと、暗闇に浮かび上がるように光る湖面が見えた。「夜の湖に来るのはあの時以来だな……」三階の部屋の様子を確かめるために...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。５シャルルが部屋から出て来たのは、四日後の四月二十九日の夜だった。リビングのソファでうとうと居眠りをしかけていたマリナは、突然ふらりと現れたシャルルを見て、飛び上がらんばかりに驚いた。「シャルルっ！...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。パリに着いたのは、日付が変わった深夜だった。真っ暗な道を進んで、突如開けたように光の洪水が押し寄せて来て、パリに入ったことがわかる。マリナは唇を噛み締めながら、心に誓っていた。絶対にシルヴァンを助けると。「オレ、今、二十区のメニルモンタンに住んでるんだ。だからすぐに着くよ」カークはそう言いながら、こう配の急な坂道...
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しかたないなぁ
「長い・重い・暗い・ややこしい」これ、私の創作のマイ☆キャッチフレーズです（自虐w）Yahooでアクセス解析が始まって、うちのブログの訪問者は、朝６時、7時、それから２２時と２３時に集中していることがわかりました。早朝と深夜・・・。私の話はたいてい、一話150～200行。字数にして2,500～5,000字程度あります。朝一番や、就寝前に気軽に来ていただくのには、ちょっと・・・多過ぎ？（汗）と思うんで...
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《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。＊「マリナ、カフェを淹れろ。マンデリンの中挽きをネルドリップで。温度は八十五度だ」「だ―――っ！...
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