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Channel: りんごの木の下で
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結婚ラプソディ 第二話(全3話)

セーヌは陽光に包まれていた。あたしたちはルーブル美術館からほど近い、プラタナス並木が続くセーヌ河岸の遊歩道を二人で歩いていた。和矢は花束を抱えている。空港からパリの街に出てすぐに買った、ミモザの花束だ。ふわふわした小さな黄色の花でとてもかわいい。「いい天気でよかったわね」「うん」和矢はあたしの横を歩きながら頷いた。「ねぇ和矢。どうしてミモザなの?...

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結婚ラプソディ 最終話(全3話)

あたしはドキドキしながら、和矢を見つめた。きっとこの後、指輪を取り出すんだわ。そしてママンであるマリィちゃんの魂が眠るこのセーヌの前で、プロポーズをするのだろう。ちょっとキザで、でもとっても彼らしい真摯なプロポーズだと思った。あたしは両手を体の横につけて背筋を正し、彼の言葉を待った。もちろん返事は『はい』よ。さあ、用意はいいわよ!そうして心の準備を万端にして待っていたのだけれど、待てど暮らせど和矢は...

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愛に濡れた黙示録 37

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。シャルルは彼女に背中を向け、消火のため部屋の奥に位置を変えたテーブルの上に手にしたピッチャーを置いた。黒いシャツの背中が凛としている。「あの飛行機で、あんたとワインをたらふく飲んだわね」マリナはそこまでしか言えなかった。無論、忘れているわけはなかった。二人でワインを痛飲して、ひどく酔っ払い、そのあと嵐のようにシャルルに抱かれ...

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そして二度目の恋をする

パァンと空気を圧縮する音が地下鉄構内に鳴り響いた。「え、快速?」せっかく走ってきたのに。無情にも電車は猛スピードのまま、目の前を通りすぎていく。銀色の車体が高速回転する機械のようだ。周りの人々はこの電車が快速であることを承知なのだろう。手に持った雑誌に目を落とすサラリーマン、腕を組む若いカップル、どこから購入するのか不思議な柄の洋服を着たお年寄りまで、誰しもがみな平然としている。マリナはぜいぜいと肩...

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愛に濡れた黙示録 31

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。13マリナはアルディ家に戻った。カークとは門の手前で別れた。出てきたときと同じようにバラ園を通り、窓をよじ登って自分の部屋に入った。明かりを消した部屋の中で、ベッドサイドのランプがクッションを詰めたベッドをこんもりと照らしていた。「大丈夫か」カークは別れる前、何度もそう聞いた。カークは、ようやく悟ったシャルルとマリナの関係に...

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第37話 イメージソング

♪「高鳴る」藤田麻衣子歌詞は コチラ「この曲をもとに37話書いたの?」と思われそうなほど、恋するマリナの気持ちを表現した曲。違いますよ、今日、偶然見つけてドキッと。なので、ご紹介!良い曲との出会いも、オーバーに言えば、ひとつの運命ですよね。よかったら、BGMにどうぞ♪

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愛に濡れた黙示録 38

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。15セーヌ河岸に今年もパリ・プラージュ(砂浜)が造られる頃になった。これは、「パリに砂浜を」という当時のパリ市長ベルトラン・トライエの大胆なアイディアによるものである。フランスの国民は避暑を好む国民性である。パリなど都市部の市民は、気温が高く湿度が高い夏には、ニースやマルセイユなどの海岸地方に避暑をとる慣習があった。だが、人...

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愛に濡れた黙示録 39

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。マリナが、兄上と及川のふたりと別れて『ざくろ通り』を出ると、パパーッと安っぽいクラクションがなった。「おーい、マリナ!」見ると、目の前の車道に止まった車から、カークが顔を出している。「あら、今日も迎えに来てくれたの?」「この通りにおまえを一人でやるなんて、デンジャラスすぎる。なんかあって、警察の仕事が増えても困るから」カーク...

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6月の雑感

こんにちは、えりさべつです。今日は青い空がとてもキレイでした。ちょっと淡い色で、雲がたなびいてて。さて、お昼寝してて夢を見ました。『黙示録』のラスト。すごいラストでした。シャルルとマリナと、その他みーんなが、マシンガン片手に、どこかのビルの屋上でヘリの強風に煽られながら、ギャングと戦ってました。・・・007か!(笑)そんな話、書けないし、別に読みたくない(笑)深層心理にそんな願望でもあるのかって、一...

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愛に濡れた黙示録 40

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。『日本人女性バイオリニスト、史上初ニューイヤーソリストに決定!』この知らせは、ウィーン時間で日付が変わる午前零時、公式発表の予定だ。マリナは、シャルルが秘密裏に手にいれた明日の朝刊の一面を携えて『ざくろ通り』に向かった。太陽が西に傾くのと同時にピタリと風が止み、蒸し暑い夜になっていた。通りの隅のほうでは猫が二匹、丸めた手をし...

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愛に濡れた黙示録 41 について

いつもお読みくださり、ありがとうございます。さて、第41話は、大人向け描写のため限定公開です。お気に入り登録者様のみとさせていただきます。登録がまだの方は、下記の《新しくお気に入り登録をご希望される方へ》手順をご参照ください。なお、記事へのアクセス方法は次の通りです。1、シャルルのIQ2、シャルルの誕生日(月日を3桁で)以上二つの数字を合計の上、その数値3桁を、半角で、当ブログ内にあります記事検索機...

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愛に濡れた黙示録 42

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。明朝目が覚めると、隣にシャルルの姿はなかった。手を伸ばしてサイドテーブルに置いてある時計を引き寄せた。八時少し前だ。マリナは慌てて飛び起き、支度をした。シャルルは朝に弱い。十時前に起きることは稀だった。その彼がどうして早起きしたのか。昨夜の会話も合わせると、答えは簡単にでた。シャルルは薫と兄上の件で動き出したのだ。ならば自分...

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梅雨恋情

私がその地へいきたいと思ったのは二年前だ。懇意にしている財団からの誘いがあったのだ。新しい遺跡を発掘したから、ぜひ調査に協力してほしいという。最初は断ったが、七世紀ごろの書簡らしきものが見つかっていると聞いて、心が動いた。それが本物であれば、ぜひこの目で見てみたい。私はすぐに「了承した」と返事をしていた。かの地―――日本は変わっていなかった。私がいったのは六月。それが情緒と勘違いしているのか、日本の...

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愛に濡れた黙示録 43

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。17夕食後、ジルとマリナは『ざくろ通り』へ向かった。いつもならマリナはメトロで『ざくろ通り』に通っている。シャルルには車で行けと再三言われていたが、アルディ家付きの運転手を自分の用事のために駆り出すことに恐縮したし、何よりメトロで行くほうが気楽だったのだ。切符は自動券売機で買える。一度手順を覚えれば、フランス語ができなくとも...

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愛に濡れた黙示録 44

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。先ほどまで真っ赤に空を染めていた夕日は、ビルの合間に沈み、夕闇が分刻みに垂れ込みはじめていた。『ざくろ通り』には二十軒ほどの店がある。ほとんどが派手なネオンが掲げるパブで、通りには幾人かが歩いている。だが『蝶の夢』の前は静かだった。誰もが見ないふりをしているかのように、足早に店の前を通り過ぎていく。ジルとマリナは店の前に立っ...

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愛に濡れた黙示録 45

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。薫以上に、マリナは泣きじゃくった。こういうシーンを何度も夢にみた。夢の中ではふたりは一度も会えなかった。薫が兄上だと気付いたとたん、兄上はいつも魔法のようにパッと消えた。目が覚めるたび、激しい自己嫌悪におちいった。自分はふたりの再会を望んでいないのではないか。言い換えれば兄妹は決して結ばれないと心のどこかで思っている―――そ...

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逃げない宣言

こんにちは、えりさべつです。...

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愛に濡れた黙示録 46

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。和矢ははぁはぁと息をつきながら、マリナ達の前に到着し、「あれ、おまえ、マリナ……?」マリナの姿を見て、薫と同様に目を丸くした。「どうしてここにいるんだ?」心底不思議そうに問いかけてくる。「ああ和矢ってば、変わらないわ……」そんな感慨がマリナの胸の片隅をかすめた。和矢は一言で表すととてつもない美男子だ。鼻筋の通った彫りの深い顔...

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☆チャット開催のお知らせ☆

深夜に活動中。...

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愛に濡れた黙示録 47

《ご注意》第一話の注意事項をご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧ください。娼館『蝶の夢』の前は、まるで演奏直後のコンサートホールのような興奮と熱気に包まれていた。拍手は鳴り止まない。「タツミ、あんたの妹ってすごいねー」ミリアムは素直に感嘆の声を上げた。「まるでプロみたいじゃん!」いやプロなんだ、と説明する間もなく、ジルが彼女のそばに寄った。ミリアムに何かを耳打ちしている。それからまもなく、ジルとミ...

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