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Channel: りんごの木の下で
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不実な夜をとざして 第二話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。2夢かと思った。それとも見間違いかと。だって、シャルルは明日パリで行われる内閣府の審議委員会に出席するために、十九時発の飛行機に絶対に乗らないといけないはずだったのに……?。マリナは左手首の腕時計を見た。ちょうど十九時を回ったところだった。シャルルは塀から身を起こすと、住宅地の人気も車の通りもない道路を悠然と渡っ...

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不実な夜をとざして 最終話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。3枕元でピピピッとアラーム音が鳴った。「うーん……」マリナはごろっとベッドの中で身体を転がしてから、頭を起こしてアラームを止めた。ヘッドボードのデジタル時計はAM9:00を指している。まだ早い。もう一度枕に頭を沈めた時、いやにベッドが広いことに気づいた。「シャルル、もう起きてるの――?」返事がない。リビングルーム...

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不実な夜をだいて 第一話

《ご注意》1、辺境の一ファンの妄想です。あくまで個人の趣味ですので、ご了承ください。2、「不実な夜」シリーズの最終部です。第一部「かさねて」第二部「こえて」第三部「わすれて」第四部「とざして」を最初にお読みください。 コチラ...

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不実な夜をだいて 第二話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。2「最低ね。はっきり言ってサイアク」マリナは顔を上げた。「……シャルル?...

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不実な夜をだいて 第三話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。3由里奈の手に引かれて、和矢がリビングに入って来た途端、母親が嬉しそうに立ち上がった。和矢が池田家に来るのは三年ぶりだ。「和矢君、久しぶりね~っ、元気にしてたっ!?」「はい。変わりはありません。ご無沙汰してました」和矢にキッチンの椅子をすすめてから、由里奈は冷蔵庫を開けてグラスに麦茶を注いで、彼の前に供する。「和...

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不実な夜をだいて 第四話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。4和矢は厳しい顔で、テーブルの上に置いた両手を組んだ。「シャルルがオレに教えてくれたホットラインにかけたんだけど、繋がらない。回線自体が抹消されてる」「うそ…っ!...

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冷凍月

「冷えてきたわね――っ」青い空は街路樹がにじんだように、黄色を抱く。これからどんどん色がぬけていくだろう。反比例するように、街も人も分厚い衣をまとい暗く沈む。やがては身体から吐く白い息を、なによりも美しく浮かび上がらせたいかのように。小さな恋人は、両手で赤いトレンチコートの襟を立てた。「まだ夜じゃないのに、月が見えるわ。ねぇ、もし変身できるとしたら、あんたは何に変身したい?」「これはまた唐突だね」「...

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不実な夜をだいて 第五話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。5コンコンとノックの音がした。「麻里奈?...

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不実な夜をだいて 第六話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。6礼服を着た父親が待っていた。何も言わずに突き出された左腕に、マリナは右手をそっとかけた。「……父さん、ごめんね」「今さらなんだ」「あたしって、親不孝ばっかりしてるね」父親は小さな頃からよく見慣れたひきつり笑いを浮かべた。「親父が言ってた。親は子供の親不孝を、三つまでは許すべきだと」「親不孝を三つ?」「そうだ。お...

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めずらしいことですが。

おはようございます、朝6時のえりさべつです(笑) めずらしくへばってまーす!いえいえ、リアルがめちゃ忙しくて。「不実な夜」シリーズもいいところなんですが、今週は二回しか進められませんでした。出来てはいますが、...

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「夢」の誘惑

「夢を見た?」「そうなの。変な夢」あたしがそう言うと、シャルルは「またか」とサイドテーブルにグラスを置いた。「最近、毎晩だね。気になってることでもあるの?」「別にないわ。特に困っていることもないし、生活は問題ないし、身体は元気いっぱいだし。わけがわからないの」「じゃあ、夢の内容を言ってごらんよ。ヨセフじゃないけど、解き明かしできるかもしれないぜ」「えっ……」あたしは慌てて口ごもる。だって、言えないわ...

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不実な夜をだいて 第七話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。7横浜港に夜が訪れた。山下公園で係留されている氷川丸は、夜になると姿を変える。黒い船体は夜の闇に溶け、マストを中心に何万個ものイルミネーションが施されて、まるで海に浮かぶ宝石島のようだ。甲板には、その雰囲気を楽しむ人々が大勢いた。一番端に立って、海風に吹かれながらマリナは電球の列を見上げた。スピーカーからはハスキ...

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不実な夜をとざして 第二話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。2夢かと思った。それとも見間違いかと。だって、シャルルは明日パリで行われる内閣府の審議委員会に出席するために、十九時発の飛行機に絶対に乗らないといけないはずだったのに……?。マリナは左手首の腕時計を見た。ちょうど十九時を回ったところだった。シャルルは塀から身を起こすと、住宅地の人気も車の通りもない道路を悠然と渡っ...

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不実な夜をとざして 最終話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。3枕元でピピピッとアラーム音が鳴った。「うーん……」マリナはごろっとベッドの中で身体を転がしてから、頭を起こしてアラームを止めた。ヘッドボードのデジタル時計はAM9:00を指している。まだ早い。もう一度枕に頭を沈めた時、いやにベッドが広いことに気づいた。「シャルル、もう起きてるの――?」返事がない。リビングルーム...

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不実な夜をだいて 第八話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。8電球のオレンジ色に照らされて、黒ジャケット姿の和矢が立っていた。マリナは何が何だかわからなかった。先ほどの結婚式の最中に、和矢が来た。でも、その直後、姿が見えなくなっていたから、てっきり帰ったと思っていたのに。由里奈は、驚くマリナの手を離して言った。「おかえり、和矢君」「え?...

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不実な夜をだいて 第九話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。9夜風が強まった。二十時を過ぎた頃から磯の匂いが濃厚になってきた。甲板は他の船の火がわずかにちらほら見える程度で仄暗く、風に呼応して時折揺れる床が、ここが船の上であることを自覚させてくれる。人は少しずつ減った。スピーカーはまだ甘い恋を歌っている。和矢は手を差し出して動かない。マリナは呆然としてそんな彼を見つめ返し...

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今夜は和矢とともに・・

和矢のBD長編をします、と言っておりましたが。想定外に「不実な夜」シリーズが長くなって、できませんでした。ごめん、和矢そのかわり、今夜はあなたのことを思います。『迷宮』では愛するマリィちゃんを無惨にも奪われました。マリナには拒否されたまま、意識不明に。『ミステリー』では記憶がぶっとんじゃったまま。『風にかえれ』では、大活躍するも、ガス爆発で大けがし、あげくに薫と崖へダイブ。『フーガ』ではシャルルを追...

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不実な夜をだいて 第十話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。10この手を取れば幸せになれる。和矢はそれ以上、何も言わずにただ頬を拭ってくれた。右手の掌に指輪の箱を持ったまま、両手の親指で。あたたかくて、優しい指だった。和矢が優しくなかったことなんて、たった一度しかない。三年前の冬。初雪の翌朝。『オレたち、もう別れてるから』彼のベッドで目が覚めた途端に、投げつけられたあの言...

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不実な夜をだいて 第十一話

《ご注意》第一話冒頭の注意事項をよくご確認の上、ご了承いただける方のみ閲覧してください。11*954番。二年前の春、パリのアルディ家を訪れたときの面会番号だ。二ヶ月はかかると言われた。もっとはやく、と噛み付いても、お仕着せの使用人は首を振るばかりだった。それ以上、誰も日本語で話してはくれなかった。いつかの方法で屋敷の奥に忍び込んだ。シャルルの執務室はすぐに見つかった。やはりいつかのように、シャルルは...

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【マリナBD短編】「ハジメテ」

「あっ、やめて……?」あたし、ハジメテなんだから。「ダメだぜ。まだまだだ」「本当に……ああ…っ!」「そんなこと言って、まだ大丈夫だろう?」大丈夫じゃないわ。ほら、こんなに震えてるの。「お願い、これ以上……あんっ」瞬間、ブラシが宙を舞った。パフッとファンデーションの粉が畳に散って、ああ、もったいない。「いい声だね。メイクなんか止めて、あたしとメイク・ラブするかい?」そう言うと、薫はいきなりあたしの首を...

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